赤田祐一さんとばるぼらさんによる、
「20世紀エディトリアル・オデッセイ 時代を創った雑誌たち」の
ブックデザインを担当させていただきました。
数多くの雑誌を蒐集し、雑誌をとりまく文化にも詳しい赤田さんとばるぼらさんが、
20世紀に刊行した雑誌のなかから、独自の切り口とビジュアルで多くの読者に支持され、
他のメディアにも影響を与えた雑誌を選び解説。
制作に携わった関係者のインタビュー、特筆すべき雑誌のコラムや表紙一覧、
20世紀の雑誌年表も合わせ、紹介されている雑誌はなんと1200冊。
いかにしてそれらの雑誌が作られ、読者や他の雑誌へと広がりを見せたのかがわかる、
歴史的な一冊となっています。
▽
「20世紀エディトリアル・オデッセイ」に少しでも関われたことは、
今後の自分(とこれまでの自分)にとってものすごく重要なことです。
自分が好きな世界の先人たちは、想像を遥かに上回る驚喜と狂気に満ちていた。
そのハピネスとマッドネスを現在進行形の編集であらは(表・現・著・顕)す、
赤田さんとばるぼらさん、アイデア編集部のみなさんへは、畏敬の念が強まる一方です。
その畏敬の念は、実のところ、すごいというよりこわいが本音です。
思い起こすのは、羽良多平吉さんの「ウレシイ編輯,タノシイ設計。」という
言葉の軽やかさと重み。
もちろん恐怖って意味ではなく、ひとつは、
この本やそこに登場する雑誌たちが内包している時間軸(これまでとこれから)に対する畏れで、
その重みや自分の未熟さを思い知りながら、莫大な図像とテキストの渦にもまれ、
もがきながら作業を進めた。
この経験を通して得られたものや感じたことが、なにかすぐに結果を出せるような
手軽なフィードバックではないこと、
それには「相応の時間と密度」が必要だということを感じる。
一日、一年、十年、百年、千年…の中にはそれぞれに時間軸があって、
それを川の流れのようなものに例えるなら、
そこでの過ごし方は、眺める、乗る、逆流する、潜る、杭を打つ、橋を架ける、無視する…、
ほかにもいろいろな方法や道具や環境で捉える(ような)ことができる。
それぞれの時間の構成方は、生活、さまざまな職業、歴史などの中から、厖大に学べるんだけど、
実際に自分の目の前の時間は、捉えにくくあっという間に流れて行きがちだ。
そんな中でデザインや編集は、混沌とした情報を整理して、
とらえどころのある姿に明示する役割を担ってきた一方で、
ノイズをできるだけ残して、一見とらえどころのない部分に暗示の種を蒔いてきた歴史もある
(暗示だから、「ある」ではなくて「あるはず」ですかね)。
歴史や制作物を遺産としてだけではなく、現在進行形にアップデートするための
知恵や時間の構成方ととらえると、
今後の「相応の時間と密度」と向き合えるんじゃないかと、この本を読み、関わる中で考えた。
だから今回感じたこわさには、確かなわくわくがある。
△
赤田さん、ばるぼらさん、今回がっつり不眠不休のタッグを組んでくれたデザイナーの本多伸二くん、
担当編集の久保さん、アイデア編集長室賀さん、白井敬尚形成事務所のみなさま、
宮添くん、みちまと綿くんに心から感謝いたします。
△
赤田祐一+ばるぼら 著
「20世紀エディトリアル・オデッセイ 時代を創った雑誌たち」
誠文堂新光社
B5,並製,224ページ,フルカラー
定価2,500円(税別)
『ホール・アース・カタログ』/プリンテッド・パンクス/キャッチ・ザ・ニューウェイヴ/バック・トゥ・ザ・フィフティーズ/実験雑誌としての『ア ンアン』/『ワンダーランド』と『宝島』/大伴昌司と内田勝の視覚革命/コミックマーケット創成期と同人誌/米澤嘉博の書物迷宮/雑誌曼荼羅 1901→2000/20世紀雑誌年表
【コラム】『MAD』から始まったアメリカ・パロディマガジンの影響/『JAM』/『ロッキング・オン』/『遊』/『NOW』/『新宿プレイマップ』/花森安治と『婦人の生活』シリーズ/『TAU』/コンピュータ雑誌/『ガロ』と『COM』の功績』/『ウィークエンド・スーパー』『写真時代』──セルフ出版の時代/三流エロ劇画御三家『漫画大快楽』『劇画アリス』『漫画エロジェニカ』
△
出版記念イベントを2014年5月25日(日)にVACANTで開催します。
詳細
「20世紀エディトリアル・オデッセイ」出版記念イベント|
出演:出演:赤田祐一、ばるぼら、大原大次郎
--
- -
「20世紀エディトリアル・オデッセイ」のこと #290 April 30, 2014 Tag:2014works |