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もじゅうりょく日記
モジュール編
#255 July,28 2012
Tag:展示
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それでは、「もじゅうりょく日記」<モジュール編>をお送りします。前回も書きましたが、いわゆるネタバレがあるような展示ではなく、日記は制作物の解説ではないので、全然読んじゃって大丈夫だと思いますが、情報なしでご覧いただきたい方は、展示をまずご覧いただいてから、ナナメ読みしていただければ幸いです。

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寄藤文平さんと一緒に講師をやらせていただいている、ミームデザインスクール2回目のクラス。この日は<ツール><環境><方法>に分けて、さまざまな書字を探っていく。
講評の際に寄藤さんがされていた、脳の基底核と扁桃体のお話がむちゃくちゃ面白かった。
運動や型の体得と慣れ、心を動かすもの、上達しすぎて感動が失われていくもののラインとその秘密など。

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6/10 
くもりな「名前のない日。」レコ発。ライブはもちろんのこと、空間デザインに飛ばされる。
閉演後、会場中に吊られていたオブジェクト(ジャケット表4のロケ地である、とある廃棄工場から借りて来て再構成したものたち)に見とれて放心していたら、その空間デザインをした張本人であるFirm.の松村和典さんが声をかけてきてくれた。そのまま打ち上げに流れ、熱烈に話し込む。
ニイさん、くもりなMV監督のシミズタカハルくんとタクシー帰宅。恐ろしいことに、そのタクシーに乗り合わせたのはみな学年違いの基礎デ卒であった。もっと話したし。

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6/11 
仕事。まだ具体的な制作に入れていないが、おおよそのプランが固まる。

6/12
お会いしたばかりの松村さんに、思いきって展示の空間ディレクションを打診。制作が進んだところで、相談に乗っていただけることに。

6/13 
ようやく具体的な制作に入る。墨汁を木材に塗り、画用紙にひたすら転写していく。並行して、サラダ油を使って書いたものが光に漉かすときれいで予想外にヒット。書いてからやや染みが広がるので、そこをコントロールできないものか。墨汁は凄い勢いでなくなっていった。

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オイルの加減乗除。次の日見てみると、油は塗った面からはみ出し、さらに広がっていた。油の広がりを止める方法、もしくは染みが広がりにくい油はないだろうか…。
サラダ油、軽油、クレンジングオイルなど、いろいろな油の成分を調べる。
やや手詰まりになり、試しにアトリエにあった洗剤を紙に塗ってみた。
あれ? けっこうイケる、けっこうスケる。
ということで、近くのスーパーで実験のために片っ端から洗剤類を購入する。スタンダードなものから、ナノ洗剤、アルコール消毒液、漂白剤など。

アトリエに戻り、すべてを紙に塗って試していく。
その中で、ものすごいクオリティで紙が透ける液体を発見。しかも全然染みが広がらない。これはすごい。
念のため、たっぷりめに塗ってしばらく様子を見てみることにする。

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6/15 
イガちゃんこと写真家・五十嵐一晴がアトリエに来て撮影の打ち合わせ。自然光の具合を見る。
夜、ホームセンターにてモビール制作のための木枠用の資材を調達。そのまま木枠制作に入る。
このタイプの制作は今までの事務所では無理だった。アトリエを借りてほんとに良かったと実感。
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6/16 
ミーム3回目のクラス。この日は二人一組になり、一人が目をつぶり、もう一人が指示する言葉だけを頼りに記述するトライアル。限られた情報を言葉だけで誘導するのは、とても難しい様子。
お題はAppleのロゴと、リニューアル後のTwitterのロゴ。
これは、「書く」ことに重点があるのではなく、スキルや情報や環境が共有しにくい相手に対しての、ものごとの伝え方のエクササイズ。
意外にも、線を人力デジタル化(ドット化)する人はいなかった。

寄藤さんの講評は、最初の段階で指示者が書く相手に「○mmの線を引いてみて」や「直径○mmの円を書いてみて」など、モジュールの共有化を図るためのトライアルを行うと良いのでは、とのこと。
確かに、何度か同じものを書くことに挑戦していたペアは、回を重ねるごとに精度が上がっていた。
指示者とのスケールやストロークの共有率が高まったのだろう。

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後半はディスカッション。DESIGNEASTの事例などを紹介し、対話の場の設計についてや、仕事の取り組み方や経済の話など。後半のセッションの内容には賛否ありつつ、前後半のバランスなど個人的にはいままでのクラスの中で一番充実していた気がしている。

そのあとモンブランズの単独を観に行く。ケッコンほやほやの相澤くん、あの多忙の中でいつ練習してたんだっていうくらい精度が高い。
久々のモンブランズ、ものすごく面白かった。

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お仕事。彩さんたち、モンブランズ相澤夫妻など来客盛りだくさんデイ。相澤くんがハワイの文具倉庫で仕入れたヤバ文具をたくさんいただく。

6/18  
モビール用の木枠がようやく完成。思っていたより大きい。

6/19 
モーレツな台風。世界堂で「もじゅうりょくのモジュール」用の大きい和紙を調達する。濡らさずに持って帰るのに一苦労。
世界堂近くの喫茶店で、図録用のデザインとテキストの校正。インタビュアーは屋上の林さん。ふわふわした話をしまくったのに、丁寧にまとめていただいていて非常にありがたい。
全身ずぶ濡れでアトリエに9時頃戻り作業しようとするも、雨漏りと湿気で和紙作業に入れず断念。
準備できないため、明日の撮影も延期だな。。
1時頃ようやく雨がおさまり、家まで徒歩で帰る。
帰り道、ぶっ壊れた傘があちこちから風にのって地面を平行移動していた。不思議な光景。
ものすごい植物の香りがたちこめている。すがすがしい。

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6/20 
昨晩できなかった和紙のドローイング作業。和紙を透けさせた「もじゅうりょくのモジュール」の仕上がりが、思いのほか繊細すぎた。自然光が差し込む窓越しではとても魅力的だが、人工のライトに漉かすと、透かしの良さも半減の上、現象が強すぎて来て内容に入り込めない。

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夕方、宮添浩司を呼んで仕上がったものを見せて相談する。同意見の感想だった。
吉祥寺美術館は自然光が入らないため、潔く今回は和紙のシリーズは展示しない選択をした。
夜、宮添浩司 & 本多伸二と飲む。

6/21 
「もじゅうりょくのモビール」作業。
字母の重心を探りながら糸を通し、90度回転させた状態でバランスを調整しながら木枠に吊るしていく作業は、なかなかの重労働。しかしこれ、まさに文字を組む作業である。むちゃくちゃ楽しい。

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夜、同じアトリエの住人さとしくんから初めて飲みに誘われる。同じく住人のりょーちんと、連日連夜連投の本多伸二も参加して、アトリエの目の前のバーへ。こんな良い店が目の前にあるのは危険。

6/22 
正午から文字展図録用の撮影。
「もじゅうりょくのモジュール」と「もじゅうりょくのモビール」を撮影。
モビールは5Dの動画モードにて撮影。
ほどよいゆらぎを作るために、手で仰いでみたり、扇風機を壁にバウンスさせるなど工夫するが、これがなかなか難しい。そして駄々こねる物理現象を相手にするのはものすごく面白い。これに向き合いたかったのだ。

アトリエは光が非常にきれいなので、当初プレーンな自然光のみで撮影しようと思っていたが、アイランプでドロップシャドウを付けたところ、より空間感が出たので、自然光+アイランプを選択。
撮影した動画は、なんだかずっと見ていられる。
夜、図録用テキストの校正を送信。

6/23 
川口市メディアセブンにて、初めての小学生限定の文字ワークショップ。
タイトルは「ぐうぜんと文字」。
壁一面のホワイトボードに、くじで引いたオノマトペを、前半は「長いペンで書く」「目隠しペンで書く」「定規で書く」「左手で書く」「目をつぶって、ほかの人の指示で書く」「鏡を見ながら書く」。(くじで引いた「ぺたぺた」「ギリッ」「ねっとり」などのオノマトペは一度ジェスチャーで表現してもらい、その雰囲気を文字に表してもらった)

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▲さまざまなツールや方法で、オノマトペを書いていく。

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▲「鏡を見ながら書く」(右)。これめちゃくちゃ難しいです。

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▲ミームでも行った、「目をつぶって、ほかの人の指示で書く」。

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▲一番人気の「長いペンで書く」。

後半は、聞いたことのないオノマトペを考え、それを前半でやった中からお気に入りの書字方法を選んで書いてもらう。
みんなの表現力と集中力に心底驚き、感動した。まだまだ「書くこと」の発見は、たくさんあるなと感じた。
メディアセブンのスタッフの方々と、強力なあのちゃんと浩司くんのサポートと、理解あふれる小学生のパワーによって、今まででのワークショップの中でもダントツに気持ち的に余裕を持って進行できた。全力疾走の3時間だったが、いわゆるヘトヘト感が全くない。


そのあと、待ちに待った菊地敦己邸へ。
先月行われた池田晶紀(ゆかい)「ダブルネイチャー」展のイケ×菊地さんのトークに興奮し、その打ち上げ後に決まった今回の食事会。
たまらなく貴重な時間だった。

6時間ほどのおしゃべりのあと、さらにNewtral / nomazonの飯田将平くんの自宅の屋上に案内してもらい、
2時間ほどいろいろ話こむ。脳がヒートしている。飯田くんは10コも年齢が下なわけだが、非常に親近感がある。ほんとは説教のひとつでもしなきゃいけないんだろうが、俺じゃなくていい。
先日撮影した「もじゅうりょくのモビール」の映像も見てもらう。
今回の展示制作は個にこもらず、途中段階をできるだけ見せていくことにしている。
そして屋上がものすごく気持ちがよい。ここで屋体やりたい。

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6/24 
宮添浩司に図録用の図版データを送信。図録の全体が見えてきた。
甲賀さんや鳥海さんの図版頁を拝見。やっぱり巨人すぎる。。急に緊張してきたぞ。銭湯行く。

6/25 
菊地さんからメールをいただく。ますますがんばらねば。
本康秀さんの「たのしい人生 完全版」もろもろ入稿。本さん、ものすごく優しい方だった。喜んでいただけてなにより。
搬入までちょうど1ヶ月。

6/26 
25日深夜から、来月に向けての自宅引っ越し作業。かなり進んだ。
情報解禁前なのでまだ書けないが、あるギャラリーである方達と打ち合わせ。面白いことになりそうだ。そのメンバーたちと渋谷で食事→朝方、謎の流れで建築家の新谷憲司さんのお宅へ。
初対面の新谷さんに朝までプレゼン&真剣トーク。謎すぎて良い時間だった。7時ごろ帰宅。少し寝なければ。

6/27 
正午、三茶で色校正チェック。アトリエに行って小澤雅志くんのポートフォリオの撮影の具合を見る。
そのあと一度帰宅し、11月の大きな企画の打ち合わせ。ドキドキする。
帰り際、二重橋の抜けに吸い込まれて、しばし歩く。
「塵の眼、塵の建築 」購入。ノーテーションについてなど。
その流れで一瞬「道」へ。店長の岸本ちゃんと、竹尾本店のケータリングについての打ち合わせ。

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6/28 
展示の空間を担当してくれるFirm.の松村さんがアトリエにきてくれた。内容をプレゼンし、おおよそのプランを組み立てていく。アイデアがどんどん立ち上がっていく。
3年前の個展の際も、その後の自分に大きな影響を与える人達に出会っている。今回もありがたい出会いが連鎖している。

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▲Firm.松村さん

6/29 
ブーヤンさん送別会。瀧さんに久しぶりにお会いし、全力でキンチョー。
瀧さんに、いつの日か自分が関わってきた仕事をしっかり見ていただけるように願いながら、仕事をしているフシがある。
話を聞くと、20代前半で氏の仕事に関わらせてもらった牙チームのみんなは、内容は違えどみんなそう思いながらやっているようだ。
ブーヤンさんもそのひとり。ブーヤンさんはそのアダ名の名付け親が見守る中、鮮やかにスペインに発っていった。

6/30 
ミーム最終回。第1回で行った「秒写」と「感字」の成果物を、全員で1冊の蛇腹状のブックにライブエディティングするの巻。
30名が3時間で90ページのブックを完成させた。
ダイナミックな回だった。皆イキイキしていた。
PC上で、ゲームの複数同時プレイのように同じ画面を共同でデザインすることはしないけど(できんのかな?)、これだったら個にこもらずに共同で活きたものに仕上げていける。
もちろん、個の詰め作業の重要性は承知の上、このダイナミズムはもっとあったほうが良いのでは。

そのあと打上げに。寄藤さんに鋭いヒントをたくさんいただく。
レクリエーションでもワークショップでもない最終回。あっという間だった。

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3次会までクラスのみんなにツッコミを促し続けたあと、宮添浩司宅に展示図録の束見本を見に。
バットマン風の女性用コスプレ着という謎の衣と、固すぎて分厚すぎて上から触っても何も感じないという噂のブラパッドに身に包んだ、完全な女性芸人の域に達した、本当は繊細な性格のご近所デザイナーのあかりちゃんに絡まれながら、思いのほか酔いまくっていることに気付き、5時ごろ帰宅。

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「もじゅうりょく日記」<モジュール編>はここまで。
次のエントリでは、7月突入から展示オープンまでの<重力編>をアップします。

モジもじ文字」、ぜひ来てくださいね。
それでは!



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