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1月16日: 友人の写真家・五十嵐一晴くん主催のポートフォリオレビュー『CLASH』へ。圧倒的な写真家が多い。特に阪本勇さんは、キャラクターも写真も真面目な上に美しくハミ出していた。本としての生物感もすごい。阪本さんは後日『PHOTOGRAPHICA』の付録になった写真集も送ってきてくれたのだが、宛名の書き方からスーパーの包装紙を丁寧にカラーガムテで梱包した小包の隅々に至るまで徹底していた。夢一平さんの、文庫本にカラーコピーの写真を全頁に貼ったポートフォリオも生々しかった。結局4時間も滞在。1月18日: 『死なない子供/荒川修作』を観る。終演後は監督と渋谷慶一郎さんのトーク。ここでもJ・ギブソンの名前が出てくる。「気配は雰囲気によって変わる。雰囲気は環境によって変わる。環境は有機体によって変わる」荒川修作 1月19日: 古書店で『週刊本』(1984年朝日出版社刊)購入。特集は「地平線の書物・本本堂未刊行図書目録」。井上嗣也さん、赤瀬川さん、浅葉さん、日比野さん、細野さんなど、蒼々たる方々による手書きの架空造本設計特集。手で書かれた本の姿に惚れ惚れ見入る。1月21日: 自転車で行ける距離にある上町の『SO DO』カフェへ、内山太郎くんの新ブランド「ENDS and MEANS」の展示会に行く。太郎くんのつくるものはいつも素晴らしい。人柄も最高。服や帽子やバッグなどに加え、新作にはなんとオリジナルのお茶も。ものすごく美味。「ENDS and MEANS」は「目的と手段」という意味だそうだ。奥さんのCZARちゃんの画とコラージュの展示も同時開催。かわいらしいルックスや性格と全く一致しない宇宙感に持って行かれる。サイゴンでカレー食べながら2人の(大学の頃の)ロンドンでの生活や仕事のことなどいろいろな話を聞く。この夫婦と話すといつも完全に和む。1月22日: 佐藤直樹さんと荻窪『6次元』店主の中村さんと打ち合わせ。チャリで荻窪向かうが40分かかる。ゼーゼー。後悔。展示タイトルは「町と本」に決定。佐藤さんが「町」、自分が「本」を担当。具体的になってきて楽しみ。チョークで月替わり(?)看板描かせていただいた。1月23日: 『D♥Y』に出店予定の「オモンマ文具店」に向けての文房具採集に、鎌倉に行こうか葉山に行こうか迷った挙げ句、江ノ島へ。久々の江ノ島、余白具合が最高に気持ちいい。江ノ島をぐるりと岩沿いに半周。海岸に打ち上げられたさまざまな「文房具」を採集して歩く。すべる。危ねー。日没間際デブダッシュで片瀬海岸へ。するとバッタリと河野未彩ちゃんに会う。いろいろお話する。偶然に身を任せてフラフラ行動すると面白い引き合わせがある。帰って来て「文房具」たちを洗浄して並べると、「こんないいもの拾ったっけ?」と驚くものが混ざっていた。1月27日: 庭園美術館で『20世紀のポスター[タイポグラフィ]』展のレセプション。2月と3月に、ここでワークショップをやらせていただく予定。庭園美術館は激アンビエント。そしてポスター群は知覚体験に十分なサイズ、迫力、肌理で圧倒的だった。シャキっとした。1月29日: 国際文化会館で石川九楊先生の講義「日本語活字のゆくえ」(司会・鳥海修氏)。一生モノだった。まとめきれないので、懸命に手を動かしながら反芻して日々を過ごす。1月30日: ふたたび「オモンマ文具店」に向けての文房具採集。今回は葉山へ。目利きのあかりちゃんと、大野彩芽っち&ショーゴくん夫妻に付き合ってもらう。海岸の宝採集は、正式には「ビーチコーミング」と言うらしい。ガラスが変型したものは「シーグラス」。お…しゃれ…すぎませんか? 日没までぶっつづけで採集。数千数万の石や貝や打上げられたさまざまな物体の肌理を見続け、かき分け、手で触れていくと、次第に目が肥えてきて質感や形態の差異を感知しやすくなってくる。欲しているカタチも不思議と目に飛び込んでくるようになる。感触としては、砂浜よりも砂利の多い波打ち際がホットスポットのようだ。「文房具」たちは、ディグった人それぞれの性格や審美眼がにじみ出ることが分かった。1日中、手足を汚しながら偶然性に身を委ねる。富士山が映える夕焼け空に雪が降ってきた。不思議な天気。戦利品を並べてワイワイやっている僕らに、地元のおばあちゃんが「それは珍しい猫貝だよ!」と、杖で茶碗の破片を差しながら一生懸命にプレゼンしてくれた。打点が高い。幸せな気分になった。その後もいくつか貝を拾ってくれた。6時頃『魚佐』で食事。冷えた体にしじみ汁が沁みる。帰宅後の風呂も沁みる。
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#231
February1, 2011
Tag: Diary
1月の見聞雑記